本読み、音楽、アニメ、ゲームなど……じぶんのためのメモ的なものを、気まぐれに載せています。

2014年7月22日火曜日

「刑吏の社会史」「当世書生気質」「子どもの貧困II」

1:34 Posted by どぼん , , , 4 comments

07/07 : 阿部謹也「刑吏の社会史」

◆共同体の傷を修復するための儀式としての「処刑」をおこなう「刑吏」が、長い時間をへて、共同体から排除(市民権を認めない)されるほどに忌避されるようになったのはなぜか。つまり、神の使途として現れた刑吏が、どのようにして忌避の対象となったのか。人びとにとって「処刑」や「刑吏」はなんだったのかということを探る一冊。

◆刑吏という職業が生まれ、人びとが抱く刑吏へのイメージが変化してゆく。そしてその背後には、都市の成立のなかでの刑吏が公務員的な位置づけになっていったことや、純粋な市民(けがれのない市民)たちからなる同職組合の結成、あるいは土着の神とキリスト教的平和観の衝突などがあった。「社会史」の面白さが詰まった一冊ではないかと思います。


07/09 : 坪内逍遥「当世書生気質(とうせいしょせいかたぎ)」

書「ヤ須賀。君も今帰るのか。」
須「オオ宮賀か。君は何処(どこ)へ行つて来た。」
宮「僕かネ。僕はいつか話をした書籍(ブック)を買ひに丸屋までいつて、それから下谷の叔父(おじ)の所(とこ)へまはり、今帰るところだが、尚(まだ)門限は大丈夫かネエ。」
須「我輩(わがはい)の時計(ウオツチ)ではまだ十分(テンミニツ)位あるから、急(せ)いて行きよったら、大丈夫ぢゃらう。」 宮「それぢゃア、一所にゆかう。」
須「オイ君。一寸(ちょっと)そのブックを見せんか。幾何(なんぼ)したか。」
宮「おもったより廉(れん)だったヨ。」
須「実にこれは有用(ユウスフル)ぢゃ。君これから我輩にも折々引かしたまへ。歴史(ヒストリー)を読んだり、史論(ヒストリカル・エッセイ)を草する時には、これが頗る益をなすぞウ。」
宮「さうサ、一寸虚喝(ほら)の種となるヨ。」
◆恋愛あり、笑いとハプニングあり、人生論あり・・・登場人物には、まじめで繊細な人もいれば、どうしようもないくせに口だけ回る人もいる。そこには人間や社会の姿があるといってもよいと思う。◆そして、そうしたありのままの人間の立ち振る舞いを創作して描き出すというのが、著者が「小説神髄」であきらかにした立場です(たぶん)。それは、それまでの文芸作品を乗り越え、勧善懲悪というメッセージありきの物語を乗り越えるということ、著者が近代文学の祖だといわれるゆえんはここにあるのでしょう(たぶん)。

◆と、そんな小難しいことを考えずとも、書生言葉(書生が使う、方言やら外国語やらが混ざった謎の言語)が面白いので、どんどん引き込まれる。本書に登場する書生の一人が、友人が購入した本をみてひとこと。「これは実にユウスフル(有用)ぢゃ」。


07/18 : 阿部彩「子どもの貧困II――解決策を考える」

 しかし、日本とオーストラリアの違いは、オーストラリアでは貧困層に給付を行うことは「当然」と思われているのに対し、日本においては貧困層への給付も厳しい目にさらされることが多いことである。[...] すなわち、高所得層をも対象に含めた普遍的な現金給付制度にも批判的であるし、貧困層のみをターゲットにする選別的な現金給付制度にも好意的とはいえない (p. 115)
◆貧困の原因は、個人にあるのだろうか。それとも環境にあるのだろうか。実際にそれを断言することはできないが、子ども期の家庭環境は、大人になったときの生活環境に大きく影響する。親が貧困ならば、子どもも貧困に陥ることが多い。◆親の貧困から子どもの貧困へと連鎖する過程にはどのような道のり(経路)があるのだろうか。著者が前著「子どもの貧困」で明らかにしたのは、その問いの答えになる要因があまりにも多いことと、そうした要因からもたらされる子どもの貧困が、とりわけひとり親世帯で深刻だということだった。このことは、負の連鎖を断つためには(現金給付だけではなく)さまざまな支援が必要だということを物語っている。

◆本書は、その問題意識を受け継いで解決への道のりを探り、読者に呼びかける。こうした問題を放置することは、社会的なコストが増えることにもつながる。だとすれば、どの段階で(未然に防ぐ制度か、あとから救う制度か)、誰に対して(広く浅くか、狭く深くか)、なにを(現金か、モノ・サービスか)、どのような支援をすればよいのかを考えなければならない。しかし、それぞれの選択肢は一長一短だから、明確に「この方法がよい」と答えることは難しい。また、その支援の成果をどのように評価するかといった政策評価の問題もある。

◆社会政策や社会福祉に関心がある方が読むと刺激になると思います。また、それ以外の人にとっても、現金給付などの大きな問題に再考を迫る(つまり、賛否両論が巻き起こりそうな・・・)一冊ではないかと思います。


気になった図表

気になった図表から、本書でいわれていることと自分用メモを記録

図表2-4 (p. 61) : 自分が40歳になったとき「やりがいを感じる仕事をしている」と思う中学3年生の割合(親への質問)
→ 相対的貧困層に属する親は、自分の子が40歳になったときに「やりがいを感じる仕事をしている」と「思う」割合が低い(つづく図表2-5によれば、子ども自身も同じような傾向を示している。”がんばっても仕方がない”ということか)
→ (メモ) いっぽうで、親の場合は「やりがいを感じる仕事をして”いない”」と「思う」割合も低い

図表3-4 (p. 93) : アメリカにおける対貧困プログラムの収益性(推計)
→ 生涯所得が大幅に増加するプログラムでも、費用対効果でみると望ましいとは限らない
→ (メモ) 大学授業料の1000ドル削減の費用対効果(≒生涯所得の増加)が意外と高い

図表7-2 (p. 191) : 世帯所得別学校外学習費
→ 塾や習い事などの学校外学習費は、早くも小学校の時期から大きな格差がみられる
→ (メモ) 私立中学校だけがほぼ横ばいにみえるのが不思議

貧困の連鎖の経路 (本書第2章より, pp. 35-66)

子どもが貧困状態に陥ると、どのような悪影響があるのか? 親の貧困と子どもの貧困をつなぐ要因(経路、因果関係)の一部(この経路の解明・立証はきわめてむずかしい)
*) 図のなかの「?」は、本書で「検討が必要」などとして疑問視されているもの。
**) 該当箇所を参考にして適当にまとめただけなので、内容の正確さは保障できません (汗)

4 件のコメント:

  1. 「刑吏の社会史」
    こんな本があるんですね。考えたことがなかった分野ですが、どヴぉんさんによる紹介で興味がわいてきました。知るにはちょっとこわい気もしますが、具体的にどんなことがあって現在につながっているのか、気になります。

    「当世書生気質」
    …すみません、なんだか気を遣っていただいて…、タイトルの読み方…感謝です…笑。ほおーこれは面白いですね!方言が…親近感わいたり!?たしかに引き込まれそうですな!!日本語と外国語が混ざってて頭の体操にもなりそう。この言葉遣いで恋愛もあるとは、どんな雰囲気が醸し出されるのか興味がわく。笑

    「子どもの貧困II――解決策を考える」
    この本は!!
    タイトルにあるように、まさに「考え」させられる内容ですね。日本の子どもの貧困、については目を向けていませんでした、そんな私にも責任があるように感じます。。。想像していたよりも、もっと広い範囲で解決策を考えている本のようで、知識のない私でも深く考えるきっかけを与えてもらえそうです。最後の連鎖の経路、わかりやすい!、と同時になんだか切なくなってきました。

    子どもの貧困問題ももちろんですが、ほかの福祉関連を含めても、(積極的に取り組んでいる国と比べて)日本は遅れていると思っていましたが、取り残されていたのは私自身だったんだと気がつきました。やはりどヴぉんさんのブログは、とても勉強になります。


    こういう言い方は失礼かなと思うんですが、どヴぉんさんには感心させられっぱなしです。さらに失礼かもしれませんが、今では紹介本の中身より、どヴぉんさんの紹介文や感想が楽しみになってきました(・∀・)♪♪

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    1. 人びとが参加していた処刑(正確には、現代の処刑に相当するもの)が、いつの間にか正反対のものになっていたというのは興味をそそられます。人びとがみんなで処刑をしていたころは、処刑をした人が”けがれる”ことなどなかったわけですが、いつの間にか”けがれ”になってゆくというのが、この世界の不思議な歴史の流れを感じさせてくれます。

      当世書生気質は紹介になっていませんが(苦笑)、物語自体は生き別れた二人が再会するというラブロマンスです。ただそこに、書生言葉(方言や英語の混ざった独特の語り)など、書生の生態が描かれているのが面白いところです。

      子どもの貧困はほんとうに難しいことで、あらゆるものが連鎖の経路として考えられるのは当然でもあるのですが、「なにが貧困の主な要因なのか」ということを判断するのは難しいのだと思います。幅広く、かつ、「どこに焦点を絞るか」という大問題があるわけですね。

      あんまりいい文章を書けている気がしません。さいきん、集中力がなくて(^^;)

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    2. 本当に、いつも発見や驚きがある、そして勉強にもなる本を紹介してくださって、ありがとうございます。

      いえいえ、どの本も適切と思われるそれ以上の良質な文章で うまく書かれていますよ。私が言うのもなんですが…。

      おいしいところはベールに包んでおきつつも、充実した内容になっているから このブログをもとに"どヴぉんさんの良書めぐり"という本を出版できそう。☆∀☆ 出版が実現したら、ぜひぜひ教えてください!

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    3. 巡っているのが良書か悪書か分かりませんが、思えばけっこうな量を書いているかもしれません!
      いやぁ、日々の積み重ねが大きなものになるという好例だなぁ……としみじみ感じさせられますね。 出版、どんな形でも自分の作ったものが形になるのは夢ですね(笑)

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